アジアのLNG市場創設・拡大に向けて

おはようございます。本日で3日連続投稿となります!

 

前回の記事では天然ガスの安定供給のため、

アジアのLNG市場の創設・拡大が重要であるというお話をしました。

今日はそれについて深掘りしていきます。

 

キーワード:LNG市場/アジアプレミアム/LNGハブ/スポット取引/市場流動性/貿易収支/東京商品取引所(TOCOM)/OTC取引システム/電力・ガス市場自由化/シェール革命

 

LNG市場の動向

 1969年に日本はLNGの輸入を世界に先駆けて行い現在でもLNG市場に置いて重要なプレーヤーとなっています。しかしながら台頭する中国やインドなどの新興国においてもLNGの需要が大きく伸びており日本の存在感は少しずつ薄くなりつつあります。

 LNG事業への投融資を行うJBICによると、これまで天然ガスの生産国であったフィリピン、バングラデシュベトナムなどでも生産量が減少しており、輸出国から輸入国へと変化しています。一方で、日本に対する最大のLNG輸出国であるオーストラリアは生産設備の増強により天然ガスの生産量を伸ばしています。さらに米国はシェール革命によりシェールガス由来のLNG輸出を拡大しています。他にもこれまで生産が難しかった北極海においてもLNG生産が活発化しています。

 

JBIC「特集 世界で変化する、LNGバリューチェーン

https://www.jbic.go.jp/ja/information/today/today-2019/contents/jtd_202001.pdf

 

 北極海航路は温暖化により海氷が減少したことにより通行可能になりました。この航路は地政学的にも重要なので別記事で扱いたいと思います。

 

 

○長期・安定・固定的な市場から短期・弾力的・柔軟な市場へ

 天然ガスは文字通り気体でありこれをパイプライン以外で輸送するためには冷却して液化する必要があります。このため天然ガスの輸送にはコストがかかり、LNGプロジェクトにおいては長期・安定・固定的な契約が重視されてきました。日本もこれまで輸出国と長期で石油価格と連動するような契約を結んできました。さらにその契約では荷揚場所(仕向地)が固定され、第三者への転売ができない仕向地条項(しむけちじょうこう)が結ばれていました。

 固定的だったLNG市場はアメリカのシェール革命によりLNG価格が低下する北米市場と、原油価格に連動するアジアのLNG市場との乖離などを契機として流動的で柔軟な市場が求められるようになりました。

 これから経済的に発展するアジア市場において天然ガスLNGが重要な役割を果たすためにはやはりガス価格が重要です。構造的に割高と言われていたアジア市場では流動的な市場形成のため仕向地条項の撤廃が進められています。一方、柔軟で流動性の高い取引を行うべく「取引ハブ」の形成に関しても日本、中国、シンガポール等で取り組みが進められています。既に活発な取引が行われている欧州市場や北米市場を見てみると、欧米の市場で取引されるのはLNGではなく天然ガスです。また、取引が活発化しているのは市場自由化・規制緩和が進んでいるためです。日本、中国、シンガポールは市場形成においてそれぞれ長所・短所がありますが、いずれの候補地もハブが育つ可能性を秘めています。

 

日本エネルギー経済研究所「アジアの天然ガスLNG取引ハブ形成を巡る一考察」

https://eneken.ieej.or.jp/data/7849.pdf

仕向地条項とは - コトバンク

経済産業省LNG市場戦略」

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/kihon_seisaku/gas_system/pdf/032_04_00.pdf