#003北陸電力 24年3月期第1四半期

こんにちは。今日も今日とて電力会社の決算を扱っていきます。

 

今日は北陸電力を見ていきます。

扱うのは7月28日発表の24年3月期第1四半期(23年4月-6月)のものです。

 

北陸電力の特徴は、電源別構成比において

水力発電の比率が電力会社10社の中で最も高いというところです。

 

水力発電だけで4分の1を占めています。

 

また火力発電も多く、火力発電と水力発電の二つで8割近くをカバーしています。

 

○サマリー(単位:百万円)

・売上高163,560→192,987(前年同期比+18.0%)

・営業利益△12,213→41,859(黒字転換)

・四半期利益△9,286→30,413(黒字転換)

・自己資本比率12.9%→15.0%(同+2.1pt)

 

電力会社はどこも好調のようです。

 

○百分率損益計算書

次は当四半期の百分率損益計算書を作ってみます。

 

前期 比率 当期 比率 増減額 増減率
売上高 163,560 100.0% 192,987 100.0% 29,427 18.0%
売上原価 -159,869 -97.7% -136,355 -70.7% 23,514 -14.7%
売上総利益 3,691 2.3% 56,632 29.3% 52,941 1434.3%
販管費 -15,904 -9.7% -14,772 -7.7% 1,132 -7.1%
営業利益 -12,213 -7.5% 41,860 21.7% 54,073 -442.7%

 

これを見ると

・減価率が97.7%→70.7%まで大きく低下。

 →これにより売上総利益率は2.3%→29.3%と大きく改善。

・売上総利益の金額は15倍ほど成長。

・販管費は11億円減少して販管費率は9.7%→7.7%に改善。

 →ただし影響は軽微。

・営業利益は540億円増加の418億円で黒字転換に成功している。

・売上高の増加分と同じくらい売上原価が低減している。

ということがわかります。

 

また、損益変動の要因をグラフ化してみると

営業損益が好調であるのは、

・売上高の増加

・売上原価の減少

の2つが大きく関係していることが視覚的にわかります。

 

 

○経営成績

当四半期の決算短信の経営成績に関する記述を読むと、

・売上高は小売・託送料金の改定などで前年同期比+18.0%の1,929億円となった。

 →しかし総販売電力量は減少している。

・経常利益は販売収入の増加などにより409億円の黒字となった。

 →しかし修繕費は増加している。

 

ということがわかります。

https://www.rikuden.co.jp/library/attach/20230728tanshin.pdf

 

決算短信だけではなく決算説明資料の方も読んで好調の理由を探ってみます。

 

  • 販売電力量
    • 小売販売電力量は7.7pt減少。
      • 電灯は4月の気温が高かったことによる暖房需要の減少で△1.5pt
      • 電力は契約電力の減少、工場操業の減少で△6.2pt。
    • 卸販売電力量は卸電力取引所等への販売減少により6.9pt減少。

  • 発電電力量は62.2億kWh→49.3億kWh(△12.8pt)
    • 水力は20.3億kWh→20.0億kWh(△0.3pt)
      • 水力自流式発電の減少。
    • 火力は41.8億kWh→29.3億kWh(△12.5pt)
      • 石炭火力発電量の減少。

 

北陸電力の発電においては水力と火力が主力で、当四半期原発は稼働していません。

 

これらをみると関西電力や九州電力が原発の稼働率を上げたことで

業績改善したのとは違う要因がありそうです。

 

決算説明資料には経常利益の変動要因が図解されています。

これを見てみましょう。

第1四半期決算説明資料 連結経常利益の変動要因より

https://www.rikuden.co.jp/library/attach/20230728kessangaiyou.pdf

 

このグラフをみると小売料金・託送料金の改定、燃調タイムラグが

業績に与えた影響が大きいことがわかります。

 

○原因分析

先ほどの経営成績で述べたとおり、今回の決算において重要なのは

・小売料金の改定

・託送料金の改定

・燃調タイムラグ

の3点です。

 

3つ目の燃料費調整制度のタイムラグ(期ずれ)は

前回の九州電力の記事でも解説したものです。

 

forfreedom.shop

 

今回は託送料金とはなんなのかまとめて終わろうと思います。

 

電気料金はいくつかの要素から構成されますが

その中には発電料、託送料金などが含まれています。

 

そしてその託送料というのは

小売電気事業者が消費者に電気を届けるために

送配電会社に対して支払うものです。

 

イメージ的には送配電網利用料、みたいなとこですかね。

 

我々がAmazonで買い物をするときに商品の代金と発送料を払うようなもので、

小売電気事業者は、発電事業者に「発電料」を支払い、

送配電事業者には「託送料金」を支払います。

 

電気料金の中で託送料金が占める割合は25-30%ほどです。

これが上がれば電気料金も必然的に高くなってしまいます。

 

現在の託送料金は小売事業者が100%負担していますが、

今後は発電事業者と両方で負担すべきだという意見もあるようです。

 

この託送料金が再生可能エネルギー普及の障壁となっている

という指摘もあるようで、託送料金に関しては色々と議論されているようです。

 

今日は託送料金に関して簡単にまとめただけで、

これがどのように決算に影響したか、などは深掘りできませんでした。

 

とりあえず今日はここまでです!

 

参考:

料金設定の仕組みとは?|資源エネルギー庁

託送料金とは?送配電ネットワークの仕組みと再エネへの影響 | 楽エネ(太陽光発電・蓄電池・ソーラーパネル専門商社)

https://www.kepco.co.jp/corporate/report/yaku/26/pdf/yaku26_P17_20.pdf